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連句入門（その６３） 臼杵游児 平成二十二年五月二十三日
今回の勉強は皆さんから寄せられた脇句についてです。しかしその前にお詫びしておかな ければならないことがあります。それは前回の筆者のコメントは脇句についてばかりだったことです。脇句も当然表６句の中の１句ですから表６句についての色々な制約条件を考 えながら付けなくてはならないのにそれについては一切触れていませんでした。
表６句は全体の構成からみると序破急の序にあたる部分ですから、なるべく穏やかに運ぶ のが良いとされています。そのため発句以外は神祇・釈教・恋・無常・述懐などあらわな感情を伴うものや、地名・人名・病態などの言葉は遠慮して出さないことになっています。 これは一巻の盛り上がりを裏以降に廻してそちらを大いに面白くするためです。
このことは皆さん既に充分心得て居られるはずだと決め込んで前回は一切コメントしなかった ためこれに抵触した句が何句かありました。それでは兎に角勉強に入りましょう。
最初に失敗句からです。
１、家族揃ひて拝む初富士
富士が地名
２、十日戎で担ぐ福笹
十日戎は神祇、また十日の「日」は発句にあります
３、恵方詣での長き参道
恵方詣でも神祇
４、初雀鳴く明けの嵯峨野路
嵯峨野は地名
５、明け行く空に聳ゆ初富士
1、と同じく富士が地名
６、空に五雲のなびく鶏日
鶏日とは元日のこと、折角よい季語を使ったが鶏日の「日は発句にあり、「空に五雲のなびく元旦」とすればよい。
では次に佳作６句です。
１、初鳩の胸光る瑠璃色
光るは発句の日矢と重複の感あり、また５句目が付の定座ですからなるべく出したくない。「瑠璃あざやかな初鳩の胸」では。
２、飛行機雲を曳く（2）初御空（5）
リズムが悪い「飛行機雲の長き初空」としては。
３、中天高く舞ふ（2）奴凧（5）
リズムが悪い上 奴凧は新年でなく春の季語
４、春の渚に残る足跡
打越に「艦橋」がありますから海の戻るのは感心しません。「春泥の上残る足跡」では。
４、岩清水汲み点てる初釜
清水は夏の季語、「初釜」が新年の季語につき「名水をもて点てる初釜」とすればよい。
５、潮風に乗る松の初声
「初声」は元日の朝早く囀る鳥の声だから「松の初声」はおかしい。「初松籟の乗れる潮風」くらいか。
６、高きに鳶の舞ふ（2）初御空（5）
リズムが悪い。「高きに鳶の舞へる初空」ならよい。
続いて入選１６句です。
１、獅子舞の来て賑へる門 荒井 慈
２、翁媼の揃ふ掃初 同上
３、初雀来て賑はへる庭 荒井 慈
４、静けさ誘ふ羽根つきの音 北川 稔
５、友の賀状に想ふ故郷 北川 稔
６、カルタ遊びの子供等の声 同上
７、蒼天に舞ふ正月の凧 佐島和人
一応入選にしたが佳作3、に記した通り単なる凧は春の季語であることを憶えておくこと。
８、朝の静寂を破る弾初 佐島和人
９、摘めるなずなの柔らかな土 同上
１０、疾風のごとき武者ののり駒ぞめ初 佐島和人
１１、稽古はじめか遠き三味の音 千葉 繁
１２、庵の春に尺八の音 高野郁雄
原句でも新年だとわかるが季節の春と混同しやすい。「新春の庵」／「迎春の庵」尺八の音 としたほうがよい。
１３、雀の宿を訪へる初夢 同上
１４、初風厳し山峡の空 高野郁雄
１５、初霞せる遠ちの山々 大森道生
１６、さらさら流る若菜野の川 大森道生
発句の「日矢受くる竹百幹の淑気かな」に入選句はどれも良く付きますが、特に網掛け太字の７句は良い句です。今回はその中から
「１０、疾風のごとき武者の駒ぞめ初 佐島和人」
を治定します。
日矢を受けた淑気漲る見事な竹薮の横を疾風のごと初乗りの武者が走り抜けてゆく情景で、 勿論昔のことを想像したユニークな付句です。
扨 次は第三の付句です。
日矢受くる竹百幹の淑気かな 臼杵游児
疾風のごとき武者ののり駒ぞめ初 佐島和人
この発句・脇の描き出した世界がこの半歌仙のスタートですが、第三はこの世界から大き く転じて四句目以降につなげて下さい。次につなげる意味で句の最後の留字は「て・に・ にて・らん・もなし」のどれかを用いることになっています。また発句・脇は新年の句（冬 の句）ですので第三は無季、つまり雑の句で長句をお願いします。勿論 表６句の制約を 忘れないでよい句・面白い句を考えて下さい。
何句でも結構です。臼杵游児宛 葉書・ファックスで投句して下さい。
締め切り：平成２２年６月２０日（日）
宛先：〒２２７－００４７ 横浜市青葉区みたけ台２－２２ 臼杵游児宛
電話：045-971-3293（Fax：電話に同じ）
