同好の集い
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連句入門（その６０）
この半歌仙も愈々最後の句、つまり挙句を付けて巻き上げることになりました。昔から 最後の最後のことを「挙句の果て」と言いますが、その言葉も連句からきたものです。
前句の花の句は
「流鏑馬の発止のは甲矢に花吹雪」ですが、それに皆さんがどんな句を付けられたか、勉 強してみましょう。

まず失敗の８句です。
１、切通し越え春の訪れ
２、テレビニュースに春の訪れ
　　この両句は「春の訪れ」と詠んでいますから当然＜初春＞の状況です。
　　花の句は＜晩 春＞ですから＜初春＞は季節が戻るつまり季戻りの句になります。連句では季節も戻 ることは不可です。
３、源家の古都に初蝶の舞ふ
　　この句も初蝶が仲春の季語ですから季戻りです。
４、空腹かかへ熊穴を出る
５、しかと受取る卒業証書
６、新入生の晴れやかな顔
　　この３句共「熊穴を出る」「卒業証書」「新入生」の季語はどれも仲春ですから季戻り です。
７、ほたりほたりと春の雪降る
　　前句に「吹雪」と雪の字があるのに続けて同じ漢字を用いることは出来ません。
８、波打ち際を駆ける若駒
　　打越に「艦橋に立ち」と海がありますから「波打ち際」は不可。また若駒も前句の馬 の繰り返しです。
ご覧のように失敗作のうち６句は季戻りです。花は晩春の季語ですから、晩春か三春の季語をもってこなくてはなりません。卒業とか入学とかは花の季節と略重なりますし大目に見たかったですが、今回は少し厳しく判断しました。

次は佳作４句です。大部分はリズムの問題です。
１、牛は長閑にただ（2）大欠伸（5）
　　リズムは下七を「大欠伸する」とすれば直ります。
ただウ６に「大くっさめ」がありますからこれもやや問題です。
２、ピエロを装ひ（8）風船を売り
　　上七が字余りです。「ピエロ姿で風船を売り」では。
３、天に雲雀の声（2）高らかに（5）
　　下七を「声の高らか」としましょう。
４、春の渚に残る足跡
　　打越に「艦橋」がありますから海の戻るのは感心しません。「春泥の上残る足跡」では。

最後は入選２４句です。
１、春爛漫の古都の賑はひ　　　　　　　　　大森道生
２、春べ賑はふ墨田公園　　　　　　　　　　　　同上
３、富士の裾野に春の巻狩　　　 　　　　　　同上
　　２、の春べは「春方」つまり春の頃の意味です。
　　１～３は何れも日本の地名が出てきました。実はこの半歌仙は地名・人名が出ていませんので結構です。また前句ともよく付きます。
４、田畑湿りて土匂ひくる　　　 　　　　　　　同上
５、武者の絵凧をビルの谷間に　　　 　　　　　同上
６、ときめく初球いよよ球春　　　　 　　　　高野郁雄
７、人形芝居春の小屋掛　　　　　　 　　　　千葉　繁
　　特に瑕疵はないので入選にしましたが「春の小屋掛」がやや季節感がありません。
　　「木偶の芝居に春惜しむ夜」とでもしてはどうでしょうか。
８、遠く臨めば遍路行く影　　　　 　　　　　同上
　　前句の流鏑馬の句は神の句ですから直ぐに仏を出してよいのかと疑問に思った方もい ると思いますが、打越になっていなければ宗教を続けて出しても支障はありません。
　　但し「臨」むより「望」の方がよいのでは。
９、野立の席にゆるる陽炎　　　　　　　　　　佐島和人
　　「野立」は貴人の野外で乗り物をとめて休息すること。
　　「野点」は野外で茶を立てることです。この句どちらを詠んだのでしょうか。
１０、ゆるりと揺れる夜のふらここ　　　　　　　同上
１１、青空に舞ふ赤き風船　　　　　　　　　　　同上
１２、風に音なし春の里山　　　　　 　　　　同上
１３、春を惜しみてギターつまびく　　　　　　　同上
１４、高層ビルに淡き初虹　　　　　　　　　　　同上
１５、競い合うごと囀りの声　　　　　　　　　田添豊光
１６、囀りの聞こゆ山荘の窓　　　　　　　　　　同上
１７、絵凧は風に武者震ひせり　　 　　　　荒井　慈
１８、赤いポストの春雨に濡れ　　　　　　　　　同上
１９、気の向くままに春の旅ゆく　　　　　　　　同上
２０、ハーモニカ吹く春風に乗せ　　　　　　　　同上
２１、春惜しみつつ母に文書く　　　　　　　　　同上
２２、心静かに鶯を聞く　　　　　　　　　　　　同上
２３、夢色ふやすシャボン玉吹く　　　　　　　　同上
２４、幼に戻りゆらすふらここ　　　 　　　　同上
　　幼はウラ二句目にあります。

入選の中でも網掛け太字の6句はなかなかの出来ですが、今回はその中で
「春爛漫の古都の賑はひ　　　　　　大森道生」
を治定します。
これでこの半歌仙（18句）は下記の通り目出度く巻き上がった訳です。
皆涼しの巻」 　臼杵游児捌
一　此のあたり目に見ゆるもの皆涼し　　　　翁
二　　清らに流る風鈴の音
三　ニュータウン老人ばかり住む街に
四　　ゴルフ仲間でお茶の一時
五　上り月みがきこまれし能舞台
六　　忘れ扇に残る伽羅の香
七　ちちろ鳴く姉の回忌のいく巡り
八　　幼馴染と交す目礼
九　乾杯のカクテルの名の夢心地
十　　夫婦茶碗の片方が割れ

十一　「覆水は盆に還らず」家訓とし
十二　　　大くっさめを憚りもなく
十三　年の瀬の月は不況に身を削り
十四　　カレーライスはママが断トツ
十五　提督のつまし好物語り草
十六　　艦橋に立ち想ふ百年
十七　流鏑馬の発止の甲矢に花吹雪
十八　　春爛漫の古都の賑はひ
このようにはじめた時にはどんな進行になるか全くわかりませんが、予期しないストーリ ーを皆で生み出すのが連句の面白いところです。
扨　次の勉強ですがこれまでは余り説明がないのにただ付句を作るだけで皆さんも多少 欲求不満だったのではと心配しています。これからはもう少し説明を増やし連句のことを もっと理解しながら実作をやってゆきたいと思います。


　先ず次の作品の形式ですがもう一度半歌仙を試みましょう。連句には色々な形式があり ますが（このことも折を見て説明します）、もっとも最初の句、発句を皆さんに作っていただきます。ご存知の通りこの発句が独立したものが俳句なのです。
　そこで先ず一般的な形式は三十六句を連ねる歌 仙です。半歌仙は上記のように簡便にやるためにこれを半分にしたものです。
発句の条件は

①　季語の切れ字があること。

②　内容に制限なし。何を詠んでも自由。

これだけを頭に入れて作ってみましょう。
但し季節は当季つまり 「新年」か「晩冬」の句をお願いします。
一人二句までを葉書・ファックスで投句して下さい。
締め切り：平成２２年１月３１日（日）
宛先：〒２２７－００４７　横浜市青葉区みたけ台２－２２　臼杵游児宛
電話：045-971-3293（Fax：電話に同じ）